カレッジステーションから出て、目指すは西。
ここからはひたすら中西部に向け、国立公園などをめぐる旅へと突入していくのですが、日本の倍の面積を誇るテキサスを、まずは超えなくてはいけません。
次なる目的地はニューメキシコのエル・パソ。
しかし、カレッジステーションからはおよそ十時間にも及ぶ距離。
どうせ一日では着けないので、せっかくなので寄り道をすることにしました。
テキサスの州都であり、あのSXSWの開催地、今アメリカでも最も人気のある都市のひとつ、オースティンを少し、ぶらぶらしてみました。
オースティン
SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト-音楽/映画/テクノロジーなどを組み合わせたフェス)によって日本でも近年よく名前の聞かれるようになったオースティンですが、まさかテキサスの州都だったとは。(ずっとダラスだと思ってました)
正直、都市部にはもう疲れていたし運転も駐車もしたくなかったので。オースティンに寄るつもりはなかったのですが、これまでの道中に知り合う人が皆オースティンをごり押ししてきたので、そこまで言うなら・・・ということでたずねることにしました。
とはいえ相変わらず都会の運転は慣れず、たどり着くまでにも道に迷ったり曲がるタイミング分からなくてクラクション鳴らされたりと、なかなかの紆余曲折。
たどり着いたのは昼過ぎだったにも関わらず、正直すっかり疲弊していました。
最初に街に入った印象は「まぁ、こんな感じだよね」と冴えない感想。いろんな規模の街を色々と見てきたので、「おおー!」みたいな感動は全くありません。
立ち並ぶビルがあるだけで、大して面白くないだろうと思いつつ、皆がこの街を好きな理由を探ってみるため、路上のコインパーキングに駐車。制限は3時間。それだけあれば色々と見て回れるはず。
とはいえそもそも観光スポットが存在するのかも知らないまま、とりあえず歩く、歩く、歩く。
どうやら駐車したエリアはビジネスエリアの少し外れみたいなところのようで、歩くと次々といろんなオフィスやらが目に入りました。
このGoogleの提供するインターネットサービス(アメリカの一部で利用可能)Google Fiberのオフィス。
他にもモダンな建物にレストランや店舗が入るビル。
少し離れると、開発中っぽいところもたくさん。
ヒップで洒落たバーやレストランもあちこちに。
「理想的なライフスタイル」なんて見出しが似合いそうなアパートメント。
出入りする人たちも、ラフだけど上品な雰囲気。
ひっそりとですが、ちゃんと自然もあります。
公園、というほど立派なものではありませんでしたが、一部、このようにしてナチュラルな部分を「造り出そう」としている意識は見えました。
まだ「未完成」。そんな感じの街の中心部でした。
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ちなみにこの後は、観光スポット(らしい)テキサス州会議事堂なんかにもお邪魔しました。
建築は圧巻で、上院・下院などは普段入れる場所ではないのでなかなかに刺激的でした。
現在も普通に使われている建物でありながら、議会が開かれていない時は無料で見学できます。
入場の際は厳しめのセキュリティチェックがありますが、都会の喧騒から逃れて涼みたい方は、徒歩でも行けるので是非。
感想
州都なので歴史は古いはずなのですが、よくも悪くも古さは全く感じさせない街でした。(州議会議事堂は確かに歴史ある建築だったけど、むしろ街から追いやられている印象。)
それどころか、この街って最近できたばっかり?とすら思うほどに綺麗で新しい建物が溢れていました。そして、多分これからどんどん大きくなっていくんだろうな、という感じ。
もちろん、一部古い建物もあるのですが、それすらもうまく利用して作り変えて、どんどんモダンにしていっている様子。
まだ、「未完成」。今まさに成長途中の街。だからこそ、その過程を目の当たりにできるのが非常に面白かった。
街がどのように開発され、どのように変化していこうとしているのか、何を目指しているのかを窺い知ることが出来る、いいタイミングだったと感じます。
ただ、あと数年もすれば、多分ぼくが散々うんざりしてきた、あの都市たちと同じようになるのかもしれません。
きっとその時にはもっと人気のある観光地となり、人も溢れるようになるのでしょうね。
いわゆる「大都市」になってしまう前に、その変化の過程を味わうという意味でも、何年かに一度、また訪ねることが出来たらなぁと思います。
できれば次は、SXSWの活気の真っ只中に来てみたいなぁ。
街を出てすぐのホームレス街
というわけで想像以上に楽しめた3時間。
都市の成長の最中を見ることが出来たのは、思いもよらぬ収穫でした。
また色々と考えるきっかけをもらえたことに満足しながら、いざエル・パソへと向かわんとハンドルを回してほんのすぐ、高速に乗る少し手前に、数ブロック、ホームレスたちが集うエリアがありました。
通りには路上で座り込む人たちで溢れかえり、何をするわけでもなく、ただひたすらに座っている彼らのその光景は、一昔前の大阪の動物園前(わかる人にしかわかりませんね笑)をはるかに超える規模。
つい数ブロック向こうではおしゃれなお店が立ち並んでいる状況から一変、その様子は「異様」そのものでした。
これは元々そうなのか、それとも、「イケてる街」の代償として誕生したものなのか。
大きな街にとってはある意味当たり前の光景(ちょっと規模がすごかったけど)ですが、予想してなかった分、余計に驚きを隠せませんでした。
都市はどこへ行くのか
人間によってモノが消費されてるのは主に都市です。そしてそのヒトによる消費は今、地球が本来持つ生産量を上回っている。
こんな消費過多の時代に、従来のシステムが通用しなくなり循環にほころびが生まれているこの時代に、都市という人々の集合体の形式はある意味、世の中の…というか地球の(本来持つ)流れに逆行しているような気がしてなりません。
先鋭的な建築が立ち並び、おしゃれな店が集まり、ヒップな人たちが集う環境は一見素晴らしく見えるものの、その裏側には、廃棄物、汚染、また最後に見たホームレスたちの集う一角のような、「闇」も同時に存在しています。
そういった闇を解決するため、社会福祉の充実やエコシステムの導入など、これからの時代に適応していくための取り組みは世界中の都市で行なわれていますが、実際それを解決しようと動いているのはその中に住むほんの一部。多くの人は、自分たちのいる消費社会の中で自分の身の回りのことで必死です。(ぼくも然り)
都市という他よりも消費率の高い暮らす人々こそ、もっと「消費の仕方」や「循環」に目を向けて暮らさなくてはならないよなぁ、なんてことを考えさせられた「未完成の街」オースティンでした。
そんな感じで。