皆さんの今までの人生で、一番見た回数の多い映画はなんでしょうか。
そもそも、多くの人は同じ映画を何度も見ることがないかもしれません。
ぼく自身、一つの映画を見返すということはあまりないのですが、人生において、「この映画だけは何度も見たし、これからも見るだろう」という作品がいくつかあります。
ちなみに今までの人生で一番たくさん見た映画は「となりのトトロ」です。
親曰く、物心つくかどうかくらいの頃にほぼ毎日見ていたそうですが、確かに大体の台詞が空で言えます。
…とまぁ、それはいいとして。
この次点に入ってくるのが、タイトルにもある、2001年に公開された映画「冷静と情熱のあいだ」。
日本とイタリアの合作で、大物作家二人の原作に国内外の人気俳優や大物シンガーがコラボレーションして大きな話題を呼んだ本作。
ちょっと意外だと思われがちなんですが、この映画めっちゃ見てます。特にここ数年は数ヶ月に一回くらいのペースで。
基本的にヒューマンドラマやサスペンス、ロードムービーが好きなので、こういう恋愛ドラマにはほぼ興味がないのですが、この映画だけは特別。別格。控え目に言っても神。
出会いは、この映画が公開された翌年の2002年。そして、あれから15年。
ついに今年、30歳になる節目に、この映画の舞台となったイタリア、フィレンツェに行くことにしました。っていうか、ついに行くときが来ました。
正直、かなりこじらせています。ぶちまけさせて、この想い。
※2017年7月、行ってきました。
映画「冷静と情熱のあいだ」とは
見たことがない、と言う方のために、まずはこの映画について簡単に紹介させていただきます。
『冷静と情熱のあいだ』(れいせいとじょうねつのあいだ、Calmi Cuori Appassionati)は、1999年に出版された辻仁成と江國香織による恋愛小説。並びに、この小説を原作とし、2001年に公開された日本映画。
(参考:wikipedia)
人気作家である江國香織と辻仁成が、月刊誌に交互連載という形で、一つの物語に対して別の人物の視点から描いた本作。
書籍刊行時は、江國香織版が「冷静と情熱のあいだ Rosso」、辻仁成版が「冷静と情熱のあいだ Blu」として二冊同時発売されました。
江國香織は女性側の視点、辻仁成は男性側の視点で、一つの恋愛における互いの10年の思いが綴られたこの小説は、累計約50万部のヒットとなりました。ちなみに今はブックオフの100円コーナーに大体あります。
そして映画版の公開が2001年。
当時人気絶頂だったアイルランドの歌手、エンヤを主題歌に迎え、主演には竹内豊、そして香港の人気歌手・女優であるケリー・チャン(陳 慧琳)。
原作でも舞台となったイタリアのフィレンツェ、ミラノで実際に撮影が行われ、かの地におけるスターたちの共演は大きな話題を呼びました。
当時ぼくは中学生でしたが、街の本屋にこの映画のポスターと二冊の書籍が大々的に並べられていたのを、とても鮮明に覚えています。
「冷静と情熱のあいだ」の簡単なあらすじ
イタリア、フィレンツェの工房で、絵画の修復士を目指す順正(竹野内豊)には、忘れられない女性がいた。かつて恋人であった、あおい(ケリー・チャン)という女性を。
二人は約束していた。あおいの30歳の誕生日に、二人でフィレンツェのドゥオモに登ろうと。しかしある事件をきっかけに、二人は別れてしまっていた。
ある日順正は、大学時代の友人の崇(ユースケ・サンタマリア)から、あおいがミラノにいることを告げられる。
彼女に会うためにミラノへと足を運ぶ順正。しかしそこで待っていたのは、新たな恋人マーヴと幸せに暮らす、あおいの姿だった。
失意の順正を、さらなる悲劇が襲う—。
二人の恋の行方は・・・?そしてあの約束は・・・?
初めてこういうの書いてみたけど、やっすいドラマの紹介みたいになっちゃいました。
映画の魅力を全然伝えれてないので観てない人はとりあえず見てください。Amazonプライムなら無料で見れるので。
ぶっちゃけ典型的なラブストーリーです。ベタに次ぐベタ。お涙頂戴の展開。クサすぎる台詞のオンパレード!
「やっぱ時計じかけのオレンジでしょ」「トレインスポッティングはバイブル」「アメリ!アメリ!アメリ!」みたいな人種は、多分最後まで見れないと思う。
ちなみにぼくは「ヴィンセント・ギャロ、マジ神」部族なのでどちらかというとそっち側の人間のはずなのですが、この映画だけは別格なんです。
語りますね。
「冷静と情熱のあいだ」との出会い
出会いは、2002年。
多分、劇場公開からちょうど一年ごろくらいで、初めて地上波で放送された時。ぼく15歳中学三年生。
金曜ロードショーかなんかで放送されてて、特に見ようと思っていたわけでもないけれど、たまたま始まったからなんとなく見始めて。
当時はまだ海外=アメリカくらいの感覚で、世界の認識なんて全然できていなかったんだけど、オープニング映像で空撮されたフィレンツェの景色に「こんな場所が世界に存在するのか」と完全に度肝を抜かれました。
そして国をまたいで展開される、二人のラブストーリー。
要所要所で、竹之内豊の独白(ナレーション)が挿入されるのですが、一番最初の彼のイケボとその台詞に、当時、色気づき始めたばかりのぼくは、心を射貫かれました。
「ぼくには・・・・・・ぼくには・・・忘れられない人がいた。(音楽盛り上がって時が移り、順正が自転車からバイクへと乗り換え)あおいという・・・一人の女性を。・・・ぼくは・・・いつまでも・・・忘れることが・・・できずにいた。」
からの高梨(椎名桔平)の「君は確か、日本の大学時代は国文科出身だったな」「あぁ」「…畑違いもいいところだな」の流れね。
マジすごい。映画史に残るレベル。完璧に暗記した。
この頃のぼくと言えば、人生で初めて彼女が出来た時で、もう頭の中は明朝体の太字で「恋愛」の二文字。キスもままならない、恋に恋してるお年頃。
そんな少年の心に、この独りよがりな男切ないフレーズは、なんとも。なんともなんや。
ちなみに一番ぐさっときたのは、二人の大学時代の恋愛シーンの回想。
ここの竹野内豊の演技力、マジでやばい。
落ちてくる絵を抑えながら挙動不審に目が移ろう感じとかもう、「初めて好きな子にチュウする時ってそうよな!こういう感じよな!」って頷きすぎて首とれる。映画史に残r(ry なんならこのシーンを再現しようと試みた思い出。
この回想シーンが全編に渡って竹野内豊のイケボナレーションで進むんだけれども、この文章がまたくっさいこと。最高。
これに影響受けすぎて、ぼくも当時の彼女に直筆で手紙書きました。別れた後、河川敷で焼いたらしいです。(本人談)
映画の軸は、あおいの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモで再会できるかどうか、というところ。そのあたりは言わずもがなですが是非本編で確認して欲しいところ。
で、何を思ったか15歳のぼくは「俺も、自分の30歳の誕生日はフィレンツェで過ごそう」と心に決めました。(その当時の彼女と妙な約束しなかったとこだけは褒めてあげたい。すでに人妻)
冗談のような、後付みたいな話ですが、ぼくの古い友人はみんなこの話を知ってるくらい、周りにも宣言してました。
たった一回見ただけでこれほどまでにこじらせたのは、単にぼくが影響の受けやすいバカだったからなのか、それとも運命だったのか。
とにかく、ぼくと「冷静と情熱のあいだ」は、こんな出会いでした。
「冷静と情熱のあいだ」のみどころ
15歳の頃の感覚なんて幼く、浅はかで不確かなもの。
大人になるにつれて若かったなぁ(苦笑)となるものですが、この映画だけは今もまだ繰り返しずっと見てるんですよね。
何度も見返してしまうのには、やはりそれだけの理由があります。
演技がヤバい
先にも書きましたが、何よりもまず竹野内豊の演技。
声も良いんですが、とにかく表情がやばい。
この人ってあまり表情豊かなタイプではないと思うのですが、微妙なニュアンスや感情の揺れ動きをすごく繊細に演じてる。(気がする)
意外と自分が「だらしないな」とか「ぶれてるな」って思うときにこれを見ると、順正のひたむきさとか純粋さに当てられて、「なんか自分も頑張らんとなぁ」と思わせてくれるのです。
そしてもう一人の主演、ケリー・チャンもやばい。
うまく表現できないですが、「あおい」なんですよ完全に。本人と会ったら絶対に「あおい」って言っちゃう。
あの、いつもどこかちょっと怒ってそうな、寂しそうな、切なそうな、なんとも言えない表情をしていて、この人もほんとに顔の演技がうまい。
一番印象的だったのは、あおいの友人ダニエラがマーヴの家に来て、恋人のルカからプロポーズをされたという話しを聞くシーン。
ダニエラの「あなたたちの結婚は?」に対してマーヴが答えているときのあの表情。一切台詞がないながら、表情だけでいろんな含みが伝わってくる。すごい。マジで脱帽。
他の役者陣も豪華で、脇を固めるのがあの椎名桔平、ユースケ・サンタマリア、篠原涼子とそれぞれがそれぞれで主役を張れる面々。
中でもユースケ・サンタマリア扮する崇と順正の「拾うなよ」「捨てるなよ」のくだりや、歴代彼女「秘書課のかなちゃん」「ショムニのあいはらさん」「営業三課のえりこちゃん」からの「秘書課のかなちゃん」(危うく第四セクターにいくところだったよ)の話は、比較的シリアスなトーンで進む物語に、絶妙なコミカルさで物語にゆるさを与えてリズムを良くしています。
「これ飲んだら送ってくよ」からの芽実(篠原涼子)のエロさとか、順正が修復した「サンステファノ修道院に眠っていたチーゴリの油彩画」を見たときの高梨(椎名桔平)の微笑とか、いちいちみんなの一挙一動が味わい深いんですよね…。
音楽がヤバい
で、音楽。
随所で流れるエンヤの曲もさることながら、作曲家、吉俣良さんの奏でる楽曲の数々がシーンにえげつないくらいマッチしていて、素晴らしい。
素晴らしい映画のサントラってのは、曲を聴いただけでその情景がありありと浮かんでくるモノですが、この映画の曲たちはその最たるもの。
「へたくそなチェロ」(見た人ならわかる表現)によるあのテーマソングを聴きくと、大学の裏のあのシーンが思い浮かんでくるのはぼくだけではないはず。
そして何より、美しい景色の数々。
特に舞台の多くを占めるフィレンツェの街並みは本当に素晴らしくて、ネットを見ていても多くの聖地巡礼者を生み出しています。
特に順正が工房に通う道とか、結婚式に参加したあおいが順正を見かけたあの教会とか、全然名所じゃないんだけど、ものすごく行ってみたい。
知らない人からしたら、もう何の話をしてるのかわかりませんよね。とりあえず見て。
「冷静と情熱のあいだ」への愛
すでに十分すぎるほど伝わってると思いますが、ぼくの「冷静と情熱のあいだ」愛は、モノにも及びます。
断っておきますが、ぼくは基本的にグッズとか関連商品をコレクションするタイプではありません。
漫画も本も出来るだけKindleで済ませたいし、映画とか全部Netflixでええやんと思ってるたちです。
ちなみに「冷静と情熱のあいだ」はAmazonプライム・ビデオでも見れますし、ダウンロード保存も可能です。ぼくはダウンロードして本体に保存して、いつでもどこでも見れるようにしてあります。(2017年7月現在)
何だったら車の中で運転中に再生し、音だけ聴いてます。シーンは、見なくても浮かんでくるので。
当然のごとく、小説は「Rosso」「Blu」を両方持っておりますが、実は合計4回買い直してます。
日本で1回、ニューヨーク時代に2回(1回友達に貸したやつ返ってこなかったので)、そして帰国してからもう1回。
この原作も大好きで、実はこの小説きっかけで高校時代は辻仁成作品にどっぷりはまりました。サヨナライツカとか、映画化もされたよね。
小説版と映画版ではキャラの設定とかストーリーが結構違ったりするので(芽実の生い立ちとか崇とあおいの関係性とかエンディングとか)、原作ファンだけど映画版は好きじゃない、という人も多いのですが、ぼくはどっちも好きです。ちなみに、映画版と違ってめっちゃエロいです。
知らない人からはRossoとBluどっちが好き?おすすめ?とか聞かれるんですが、違うんだって、これは二冊で一つの物語なんだって。両方読まなきゃだめなんだって。
ちなみに、映画版もDVDが「Rosso」と「Blu」の2バージョンあります。もちろん両方持ってます。
内容は一緒です。でも両方持ってます。
Bluには特典ディスクが付いていて、Rossoにはロケ地などを紹介している小冊子がついています。(個人的にはBluのがおすすめです)
あとサントラ。
この映画には二つサントラがありまして、エンヤの曲のみで構成された冷静と情熱のあいだテーマ曲集「フォー・ラバーズ」と、作曲家、吉俣良による「冷静と情熱のあいだサウンドトラック」
世間的にはエンヤのアルバムの方が有名ですが、映画のテーマソング他楽曲群はすべてサウンドトラックの方に収録されています。
ぼくはサウンドトラックの方が好きです。
ちなみにこれの他に、原作にもサントラ(というかイメージ楽曲集)もありまして、これまた素晴らしい。
映画版とはまた違った雰囲気ですが、聴けば納得の楽曲たち。
ちなみにこれも両方持ってます。(笑)
あの有名な葉加瀬太郎による「冷静と情熱のあいだ」は、実はこの原作版のイメージソングです。
あと余談ですが、ニューヨークでの大学時代、外国語を履修する必要があったので、イタリア語を選びました。
当然、理由はこの映画です。それ以外ない。
ちなみに、全く理解できなくて6回目の授業でドロップアウトしました。
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くらい好きです。
というわけで、フィレンツェに行ってきます
初めてあの映画を見てから15年。
あの時決意した「30歳の誕生日はフィレンツェで」という夢。
ぼく、まもなく30歳。
人生に一度しかこない、30歳の誕生日。
行くしかない。っていうか、実はチケットは3月の時点で既に取っていました。
7/5~7/15の10日間、名目上は完全に休暇ということで、10日間、イタリアに行きます。
自分でもびっくりです。端から見れば、どん引きされるのは百も承知です。
15年前に決めたことを、馬鹿みたいに今も抱えて、しかもそれを実行に移すなんて、自分でもどうかしてると思います。
でも、こんなバカなことが出来る環境に今、いるから。だったらもう、やるしかないじゃないですか。
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というわけで6~11まではフィレンツェで過ごし、残りはローマで過ごします。
誕生日の7/10は、当然ドゥオモ(フィレンツェ大聖堂のクーポラ)に登ります。
それ以外は一切決めてません。聖地巡礼はするつもりですが、できるだけフィレンツェのローカルな暮らしを体験したいと思っているので、宿は全てAirbnbで取りました。
本当に楽しみすぎる。
たぶん、フィレンツェの景色を見ながらサントラを聴いたら泣くと思います。想像しただけでちょっと泣ける。
※2017年7月、行ってきました。