映画『三度目の殺人』感想レビュー。日本映画のお手本のような作品だった【ネタバレ無し】

先日公開されたばかりの映画、『三度目の殺人』を見てきました。

毎度“metroglyph”にお越しいただきありがとうございます。さがやん(@sgyn710)です。

本当は同日公開された『ダンケルク』を見るつもりだったのですが、時間が合わなくて第二候補だったこちらを。

で結論から言うと

良かった。すごく良かった。

書かずにはいられないこの衝動。ニワカ映画ファンの私見どっぷりな感想を、ネタバレ無しでお送りします。

久しぶりにめっちゃ『映画』な映画を見た。

ぼくは映画に関しては割と雑食で、いわゆるベタなエンタメ系映画も見ればミニシアター系とかのアートよりの作品とかもいっちゃうタイプです。アニメ原作の実写とかも全然見ます。

ただ、映画っていうものの社会的な役割として「社会への問題提起」「技術革新の伝達」の2つは重要だと思っていて、理想的な映画というのはこのどちらかを叶えているものであるべきと思っています。(※あくまで個人的見解です。)

そういう意味で、この『三度目の殺人』というのはぼくの中では「問題提起」という役割をお手本のように描いた、まさに「THE映画」と言える作品でした。

あらすじ

それは、ありふれた裁判のはずだった。殺人の前科がある三隅(役所広司)が、解雇された工場の社長を殺し、火をつけた容疑で起訴された。犯行も自供し死刑はほぼ確実。しかし、弁護を担当することになった重盛(福山雅治)は、なんとか無期懲役に持ちこむため調査を始める。
何かが、おかしい。調査を進めるにつれ、重盛の中で違和感が生まれていく。三隅の供述が、会うたびに変わるのだ。金目当ての私欲な殺人のはずが、週刊誌の取材では被害者の妻・美津江(斉藤由貴)に頼まれたと答え、動機さえも二転三転していく。さらには、被害者の娘・咲江(広瀬すず)と三隅の接点が浮かび上がる。重盛がふたりの関係を探っていくうちに、ある秘密に辿り着く。
なぜ殺したのか? 本当に彼が殺したのか? 得体の知れない三隅の闇に呑みこまれていく重盛。弁護に必ずしも真実は必要ない。そう信じていた弁護士が、初めて心の底から知りたいと願う。その先に待ち受ける慟哭の真実とは?”『三度目の殺人』公式サイトより

問題提起

あらすじを一見すると、よくある真実を追求するサスペンスにも見えます。

しかしこの映画において重要なのは「誰が殺したのか」「何故殺したのか」ということではなく、その行為を巡って語られる「司法」や「刑罰」というもののシステムの矛盾について。

人間が「社会」を形成するために作り上げたこの仕組みの問題点を、是枝監督は登場人物たちの声を借りながら淡々と語っていきます。

是枝監督が以前制作した「そして父になる」は、かつて病院で子供を取り違えられた2つの家族をめぐる物語でしたが、この作品もまた、社会における「ルール」ではどうやっても解決できない問題について投げかけた名作でした。

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是枝監督って、こういう「どうしようもないモヤモヤ感」を描くのが本当に上手い。

そのモヤモヤはストーリーの矛盾とかそういうところではなく、現実社会で起こり得るゆえのもの。

そして、なぜ『三度目』なのか。

タイトルのその意味がわかった時、モヤモヤは鳥肌に変わり、そしてまた一層モヤモヤとやるせない気持ちになるのです。

画面構成がすごい

本編中、度々登場する面会のシーン。

ガラス越しに二人の会話が淡々と映し出されるのですが、このシーンでのカメラワークがエグい。

変な日本語ですが、「反射」と「対比」。この2つを意識して面会のシーンを見ていると、絶妙なカメラワークによって登場人物の心情の描写が行われているのがよくわかります。

映画ではよく使われる手法ですが、この使いどころが完璧だだった・・・。

他にも、わざと少し長めに取る尺とか、画面の切り方とか、見ている側の感情を煽るかのように動く画面構成に、是枝監督の手中にハマっているような感覚でした。

人を選ぶ作品

と、個人的には大絶賛の映画だったのですが、かなり人を選ぶ作品だと思います。

ぼく自身作り手であり、かつては映画監督に憧れたこともあって、話以外にも制作側の意図だったりとかそういう部分を楽しむタイプですが、映画に対してもっとわかりやすいエンタメ性であったりとか鑑賞後のスッキリ感を求める人には、ちょっと冗長に感じる場面が多いかもしれません。

ちなみに個人的には「凶悪」とか「私の男」、あと「それでも僕はやっていない」などを見た後の感覚に近かったので、そういう作品が好きな方にはいいかも。(保証はしませんが)
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もう一度見直したい

映画のメッセージや仕掛けに気付いたのが遅かったので、もしかしたら何気なく見ていた前半にももっと色々あったかもしれないと、ちょっと後悔しています。配信が始まったら絶対もう一度見よう。

また、是枝監督自身によるノベライズ版も発売されているので、より深くシーンごとのメッセージを探るためにも、読んでみようかなと思います。

こういう日本映画をもっと見たい

『そして父になる』がカンヌ国際映画祭で受賞、本作もヴェネツィア国際映画祭に出品されるなど、やっぱり海外で是枝監督の作品が評価されている部分ってやっぱり、こういう淡々とした問題提起なのかな、と。

もちろん日本には面白いエンターテイメント作品や壮大なドラマ作品も存在しますが、世界的な評価を受けるのはやはりこういうヒューマンドラマ。

おそらくはあの世界的名監督小津安二郎から脈々と受け継がれているスタイルだと思っているんですが、これって多分日本人にしか出せない機微の表現で、だからこそ海外の人たちがそれを評価するんだろうな、と思っています。

海外からの評価が全てではないですが、誰も得しないような謎のアクション映画作るくらいだったら、こういう邦画をもっと作って欲しい。

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